今日はちょっと涼しいのでホッとしています。
昨日、映画『インセプション』と、水木しげる米寿記念『ゲゲゲ展』を見てきました。
『ゲゲゲ展』では一度見てみたかった原画が見られて満足。グッズもかわいいのが多かったです。図録が見当たらなかったのですが、売り切れだったのかな。
『インセプション』は面白かったです! 久々に、文句なしの映画でした。
前知識をそれほど入れずに見に行ったのですが、予告映像などとは印象が違っていました。あまりアメリカくさくない感じでした。
なんとなく『マイノリティ・リポート』や『ザ・セル』みたいなのを想像していましたが、それらと雰囲気は全く違ったし、実際内容も違いました。
たまに、本編を見たら予告にあった映像以外に見どころがなかった…という映画がありますが、『インセプション』の場合、予告にある映像(街がめくれるシーンだとか)はお話のごく一場面でしかありません。明らかに予告以上に楽しませてくれます。
内容はややこしい話ではありますが、重要なポイントを非常にわかりやすく説明していて、こっちが頑張らなくても理解可能。かといって幼稚さは無く、ストーリーの論理や人物の心の機微など大人の知的満足にかなう難易度でした。
そう言えば、この映画はスーツも見どころかも。非常に登場率が高いです。特にアーサーが素敵だったな。
主役のディカプリオさんも良かったです。特に好きな俳優さんではなかったけど、人気があるわけだなあと納得がいきました。ビジュアル的にも能力的にも脱・とっちゃん坊やの印象でした。
あとはネタバレ感想なのでクリックでどうぞ。
久しぶりに気に入った映画なので細かく書きます。
全体にアメリカ映画的な印象を抱かなかったのは、裏切り云々の駆け引き、そのリスクの無いレベルの話だったからかもと思いました。
その手の要素は入れがちだし、入れるのもアリはアリですが、それを主題にしない限りはストーリー上横道になってしまいます。それにある意味それはプロフェッショナルの話としては低レベルです。そしてなんとなくアメリカ映画にありがちなイメージ。
冒頭で裏切り者の存在を示すことで、そういう輩も存在する業界だけれども、本編はより水準の高いプロ達(サイトー、アドリアネは別として)によって行われるプロの仕事だと理解できました。最後の最後まで、ミッション遂行に死力を尽くすプロの物語でした。後味が爽快です。
あとは、安直な恋愛要素が無かったのも要因として大きいかも。
主人公とその妻についての謎も一筋縄ではいかず、真相がわかるとなるほどと思いました。
描かれる主人公の抱く問題とその心理は、ミッションである「インセプション」にがっちりと巻き付いて、と言うか最初から境目は無く、どちらかが欠けては話は成立しない。無駄な要素がなく、主題が明確です。
エクストラクトやインセプションの設定は面白く、「他人の夢に侵入する」という言葉から受ける浅はかな想像を「層」の文字通り、垂直に切ってくれました。
なるほどその方が潔いなと思ったのは、夢に侵入する云々に使う装置や薬品について一切解説が無いこと。主題はそこではないのだから、下手に説明せず、もうそういう物が発明されている世界、という前提は良かったです。
トーテムというアイテムも魅力的で良かった。アリアドネがトーテムを使うシーンも見たかったな。おそらくトーテムを使うのは侵入しすぎて危うい人なのでしょうけど。
キャラクターも俳優陣も良かったです。正直、ディカプリオさんと渡辺謙さんしか知らなかったですが、皆さん個性的で印象に残り、愛せるキャラクターでした。
無駄にキャラを説明したり立たせたりするようなセリフやシーンは無かった印象。主題に必要なシーンだけでそれぞれの人となりを描けているのは上手いなあと思いました。
・コブ…真相的には自分で自分を縛っていたわけですが、そこから脱するためのこの一部始終は私たちにも起こりうる心の戦いでした。そういえば彼が決断に至ったのは、この物語以前に費やした時間や仲間の存在、このミッションの存在もありますが、大きくは彼自身の決断でした。困難を乗り越えるのはやはり自分自身しかいないのだなあと思いました。
・アリアドネ…ナチュラルな人物像で好感を持ちました。コブの抱える問題に向き合う姿勢も自然で、それも含めて繰り広げられる出来事への理解力や疑問の抱き方、接し方に知性と人間性が感じられる。ビジュアルもかわいいし、設計に関する想像力の働かせ方もどこかあの年頃の女性らしく、面白かった。
・アーサー…気苦労が多そうな、でも仕事は素晴らしく良くできる人物でした。「想像力に欠ける」というセリフが銃撃シーンに活かされていましたね。でも彼のクライマックスである無重力でのキックには論理的想像力がいかんなく発揮されていて、格好良かった。アリアドネと真逆の性質なのでしょうか。台襟の高い縞のシャツ、Vゾーンの狭いベストがよく似合っていました。
・サイトー…野心のある実業家らしい、腹に一物のある、度胸のある人物で面白かったです。四層目でいったいどのぐらい過ごしたんでしょう…しかし目覚めてすぐ? に電話をかけるところは、頭の切り替えの早い人なのか、信念の強い人なのか、ちょっとそら恐ろしい底力。ところで彼のトーテムはカーペット?
・イームス…山師的雰囲気が主人公などのリアルさに比べると漫画的かなと思える人物でしたが、変に感じないのは、活躍シーンが的確な部分に的確にはめこまれているからでしょうか。現実でもああいう戦闘ができる人なのかしら。夢だと現実でできない動きもできるものなのかな。
・ユスフ…なんだか気になる職業、アジア的な裏世界が垣間見えて面白い人物でした。ちょっと映画『ニルヴァーナ』みたいな怪しいサイバーパンク要素が物語に加わって魅力的。一層目での運転はすごく大変な役回り。。一層目が駄目になるとあとも全部駄目ですから、貧乏くじ? そう言えば報酬は二人分もらえたんですね。ならいいか。
・ロバート…知らずに大変な目にあっていてお疲れさまでした。御曹司っぽいエグゼクティブなスーツ姿が素敵でした。金庫の中にあったものや父の言葉は設計されたものだったでしょうが、彼の願望にかなっていたように思えます。彼があの夢で得た物は大きかったようで良かった。今後成功するかどうかは彼の実力次第ですね。
・モル…最初はてっきり何かこう、ボディーガード的な人物かと思ったら、もっと危険な存在で驚きました。そして女優さんがきれいでした。あの歌はエディット・ピアフだそうですが、ちょっと前にあったピアフの映画の主演女優さんだったんですね。
わずかに気になった部分はプロローグとエピローグ。
どちらも尺的にもう少し長くても良かったような…。プロローグから冒頭のサイトーの食事シーンへの移行がやけに急で、ちょっとぎこちなかったかな。エピローグの迅速さはアリではありますが、主人公がひたすらに目指した出来事でもあるので、もうちょっと味わってみたかった気もします。
私的にうーんと思った点があるのですが、これは製作サイドとはちょっと関係ない部分。それは字幕の翻訳です。あまり上手くないと感じました。
見ているこちらは字幕のセリフと、画面の状況や人物の心理の流れを同時進行でシンクロさせて見てゆくものですが、何と言うか…字幕情報と映像情報を脳内で組み合わせるのに一拍必要な感じ。一瞬考えないとセリフと状況が合致しない感覚がありました。ちょっと疲れます。
私が勝手に思ったことですが、喋り言葉を短い文章に翻訳するには、どうしても意訳しないといけない局面があると思うので、その辺の兼ね合いの問題か…と想像しました。
私は完全に字幕派なので、それ故に何かいらんことを感じたのかもしれません。これから見る方はお気になさらず。
あと、字幕か吹き替えか調べないで行き、(字幕だろうと思っていて)出だしで「吹き替え!?」とびっくりしてしまいました。まさか第一声が日本語とは。
最後にニヤッとさせられたのは、スタッフロール。
スタッフロールの最後の最後にあの曲がかかりましたよね。「ああ、この曲を合図に、私(観客)は夢(映画)から目覚めるのだな」と思わされ、楽しかったです。
未承認 2012/09/11 (火)07:28 編集・削除
管理者に承認されるまで内容は表示されません。